リアルフィクション3

悲惨


しかし、道具屋に居た男は言った。

「でも、俺は両親を生き返らせる方法知ってるぜ。知りたいか?」

ωは、目を大きく開いて男の方に駆け寄った。

「知ってるの!?お、教えて!!!」

「生き物を生き返らせる薬だ。人間だって生き物だからな。」

「そおか・・・。」

「でも、テメェもわかっただろ。
今まで普通に生きててそばにいた奴が、消えていく悲しみが。」

「ああ、わかった。」

「俺は、お前以上に悲惨な経験をしているんだ。だから、絶対に生き物を生き返らせる薬、【ロストバ】を手にいれるんだ。」

蘊紀は、恐る恐る聞いた。

「ひ、悲惨な・・・経験?」

「・・・。俺には、婚約者が居たんだよ。大好きだった。愛しくて、愛しくて。でも、結婚前夜、俺の婚約者は、誰かに連れ去られて、殺されてた。」

「なんて・・・酷い事を・・・。」

「その犯人は、殺すだけじゃ物足りなかったのか、指輪を奪って行ったんだ。俺は許せなかった。憎くて、憎くて。でもその犯人はもう、見つけられない。」

ωは、下を向きながら呟いた。

「その犯人を探す前から見つからないって諦めてたら、運命は変わらない・・・。」

男に少し笑顔が戻った。

「そうかもな。俺が今、出来るのは、薬とその犯人を探す事だな。・・・運命・・・か。」

「僕も、君と一緒に行くよ。犯人と薬を探そう。」

「おう!俺の名前は、カイロだ。よろしくな、ω、蘊紀。」

蘊紀はどこか焦ったように言った。
「カ、カイ・・・ロ?」

不思議そうにカイロは聞いた。

「おい、蘊紀?どうしたんだ?」

その時、蘊紀は泣きながら答えた。

「カ、カイロ・・・、ご、ごめん。あなたの婚約者、殺したの・・・、わ、私かもしれない。」

カイロは驚いた。

「なっ、なんでだよ!?どうゆう事だよ!?」

「わ、私、どこかの記憶がないの・・・。それで私の一部の記憶で、私の前に女の人が倒れてて、カイロってずっと血だらけで呟いていたの。」

カイロは絶望した。

「・・・うそだ。違う。違う。違う。」

「私かもしれないの。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。」

「俺は信じねぇ。信じたくねぇ。」

「私が・・・殺した・・・の。」

カイロは、まっすぐ蘊紀を見て言った。

「俺はまだ、信じない。薬を手に入れて、生き返らせて、それから犯人が誰だか聞く。それまでは、蘊紀を犯人とは思わないからな。」

「カイロ・・・。ありがとう。」

ωは、出来るだけ明るく言った。

「じゃあ、探しに行こうよ。」

蘊紀は言った。

「でも私、旅をしてる間に二人を殺してしまうかもしれない。実際、私は両親もカイロの婚約者も殺している。それでも、ついていっていいの?」

蘊紀は優しく言った。

「いいんだよ。まぁ、蘊紀がついて来たくないって言うなら別だけど・・・な?」

蘊紀は喜びながら微笑んだ。

「行くよ。ずっとずっと、二人についていく。」

カイロはまた真面目な顔に戻って言った。

「よし、じゃあ次はどこに行くんだ?コールディアにはもうねぇし・・・。」

ωは言った。

「うーん。とりあえず、この街を出て歩こう。」

そして三人で街を出て歩き出した。


そしてふと、蘊紀は言った。

「はやく薬を手に入れて、大切な人を生き返らせたいね。」

すると突然、どこからか女性の声が聞こえて来た。

「大切な人を生き返らせるぅー?何言ってんの?あんたら。」

「なっ、何!?誰よ!?」

「ふん。死んでる奴を生き返らせるなんてさ。死んだ奴は死んでればいいのよ。そしていつか、生きてる奴は死ねばいい。」

ωは、その女を睨みつけた。

「なんてこと言うんだ!?おばさん!!」

「私はまだ18だバカ野郎!!まぁ、そんな事はどうでもいい。・・・薬を渡せ。」